Quietworksの改め文工房

このブログは結果無価値論者の改め文遊びを淡々と晒すものです。過度な期待はしないで下さい。

二次創作と「暗黙の了解」

はじめに、少し前の記事になりましたが、id:ageha0:20080817:p1について、その趣旨には概ね賛同するのですが、一つだけ指摘させていただきたい点があります。

「「二次創作」は立派な著作権侵害なのだけど、「著作者との暗黙の了解」で成立している。」という部分についてなのですが、この表現では「著作者との暗黙の了解」がある場合を含む全ての二次創作が「立派な著作権侵害」に該当することになり、許諾が成立している可能性が排除されてしまいます。

実際には許諾が成立していると思われる場合もあり、そのような場合が著作権侵害に含まれるべきではありません。二次創作を著作権侵害と呼ぶには、「許諾が成立しなければ」という条件を満たしている必要があります。

「暗黙の了解」と「黙示の許諾」

許諾というと、書面などによる明確な意思表示を必要とする厳格な手続きという印象がありますが、実際には「相手の要望を受け入れて許す」という程度の意味に過ぎません。

著作権法は許諾について、書面によることも具体的な表現を用いることも求めていません。一般法である民法も、法律行為について明示の意思表示を求めていないため、具体的な表現を用いなくても相手に意思が伝わりさえすれば意思表示が成立し、仮に沈黙であっても状況によっては黙示の意思表示が成立し得ると考えられます。

もし本当に著作(権)者との間に「暗黙の了解」が成立しているのであれば、著作権者が発信した意思表示は二次創作者に到達していることになり、この場合の「暗黙の了解」は「黙示の許諾」として有効であると考えることもできます。

無自覚への戒めは必要

もっとも、二次創作を擁護する言説には、二次創作が原作側の著作権の及ぶ範囲内の利用であり著作権者の意思によってのみ許されていることについて、無自覚なものが少なくありません。そのような無自覚を戒める意味において、二次創作に原作側の著作権が及び、場合によっては著作権侵害に当たり得ることを指摘することは、必要かつ有益であると思います。

更新履歴

  • 前の版: なし
  • 2008-09-17 23:59 二次創作と「暗黙の了解」
  • 2008-11-29 26:10 二次創作と「暗黙の了解」