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「体罰に罰則はない」という誤った情報が流布されている件

体罰は暴行の下位概念である。だから余程の理由がない限り、刑法第二百八条を始めとする暴行に関する諸規定が適用される。怪我をさせれば傷害罪、死に至らしめれば傷害致死罪、場合によっては殺人罪というように。程度に応じ、比例原則に従って。

体罰は懲戒の下位概念でもある。感情的には受け容れ難いかも知れないが、概念上はそうなってしまう。だからといって、「懲戒権があるから体罰は罰せられない」とするのは早計である。まずは、民法第八百二十二条の「懲戒することができる」という規範と刑法第二百八条の「暴行を加えた者...は、二年以下の懲役...に処する」という規範が衝突していると捉える。その上で、どちらが優先されるかを検討する。大抵の場合、体罰は懲戒としての効果がないか、あったとしても害の方が大きいから、懲戒権の濫用となる。

無論、懲戒権が体罰の免罪符とならないことを条文上も明らかにしておくことは、有益であろう。だからといって、民法第八百二十二条を丸ごと削除する必要はない。学校教育法第十一条のような但し書を加えれば事足りる。

間違っても、「体罰罪」や「虐待罪」を屋上屋のように規定してはならない。比例原則が崩れてしまえば法秩序に対する信頼が弱まる。また、その時々で問題視された行為の態様を、結果から離れて外形的に規定してもならない。まずは回避すべき結果を具体的に定義し、そこから因果関係を遡り、結果に影響を与える行為を、危険の程度に応じ、比例原則に従って処罰することができるよう、構造化された形で規定しなければならない。

なお、児童が周囲に危害を加えているような場合は正当防衛と過剰防衛の問題であって、懲戒と体罰の問題とは区別されるべき旨を付け加えておく。

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  • 2019-03-11 18:00 「体罰に罰則はない」という誤った情報が流布されている件